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忍たま乱太郎の5年生コンビを中心に取り扱った同人ブログです。最近は雷蔵がアイドル状態。 女性向け表現がありますので注意してください。
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外に出たいと雷蔵はいう。
しかし、三郎はできることなら、
雷蔵が一生牢の中で暮らしますようにと。

心の底から願っていたのである。





「当主殿、雷蔵様は一生陽を見ることはないのですか?」

三郎は雷蔵の代わりとして不破家で生活を送り始めた頃に
すでにその質問をしていた。
当主も隠すこともないだろう、と三郎に理由を話した。

「・・・穢れた世界を知らぬまま、雷蔵を婚姻させるのだよ。
 雷蔵の相手は、もうすでに雷蔵が母の腹にいた頃から
 決まっていたのだ・・・それも、御家のための相手だ。
 馬鹿げていると、お前は笑うかもしれぬ。
 しかし、これは約束事。雷蔵には申し訳ないが
 破ることは許されぬ。」

「当主殿・・・。」

「故に、雷蔵が陽を見るのは、その相手と結ばれるときだ。
 そうなれば、お前も自由の身。気長に待っていてくれ。」

当主は三郎の頭を撫でた。
我が子の頭を撫でるように優しく。
その瞳をじっと見返しながら、三郎は思ったのだ。

雷蔵と離れたくないと。

雷蔵との距離が縮まるたびに、雷蔵に惹かれていく自分を
三郎はしっかりと感じていた。
雷蔵の穏やかな性格、優しい心。
少し寂しがりで、甘えたがり屋。

どこをとっても雷蔵は可愛かった。

その頃からすでに、三郎は雷蔵を愛していた。
たとえ同性でも、主従関係でも、傍にいられるのなら
それで幸せだと。

自分に言いきかせて、あぁ、幾年がすぎただろうか。





「三郎、お前は今年いくつになる。」

「十五にございます。」

嫌な予感がした。

「ふむ・・・来る時が来たようだな。」

やめてくれ。

「雷蔵を牢から出さねばなるまい。」

あぁ、雷蔵。
お前を他の誰かに取られてしまう。

心は張り裂けそうなほど痛かったのに、
訓練された身体からは涙は一筋も零れなかった。




地下牢には蝋燭の明かりがあるだけ。
静かな空間で三郎の声が響く。

「雷蔵、外に出れるよ。」

それを聞いて雷蔵は目を丸くした。
驚いているのか、放心しているのか。

三郎は手を伸ばして、雷蔵の手を握った。
最初は撫でるようにゆっくりと。
そして段々と力を込めていって、自分の温もりを伝える。

「本当なの、三郎・・・?」

弱々しく雷蔵が聞き返した。
表情は変わっていない。

「・・・本当さ、君は光を見れる、浴びれるんだ。」

三郎はもう片方の手も雷蔵に伸ばし、頬をなでた。
雷蔵の頬は柔らかく、そして温かかった。

「嬉しい・・・!一番綺麗な着物を着なきゃ!
 綺麗に身体を拭いて、綺麗に髪も結って!
 やっと僕、初めて外を見るのだね!」

雷蔵は微笑んだ。
瞳には歓喜の涙を浮かべて、三郎に擦り寄る。
擦り寄るといっても、頬を三郎の掌に押し付けるだけで、
それでも、雷蔵にとっての表現だった。

「・・・雷蔵、私・・・」

「何?三郎?」

「・・・何でもない。」

言えなかった。

雷蔵の喜んでいる最中にそんな水をさすようなこと。
私は君から離れなければならないなど。
言いたくなかった。

君は、何も知らなかった。
何故地下牢に入れられているかも、
何故女の着物を着ているかも。

日に一度もあたらなかったせいか、
君の肌は成長しても女の肌より白いままだ。
食事もちゃんと摂ってくれなかったから、
弱々しくはなくとも、一般男性より線の細い身体になって。

君は嫁がされるのだよ。

私と離れて暮らすのだよ。
私を忘れて暮らすのだよ。

結ばれることは、世間では喜ばしいこと。
しかし、こんな悲しいこと、私にはない。





雷蔵は目隠しをして地下牢から出た。
いきなり明るい場所に出すと、人間は目をやられてしまう。
赤い綺麗な和模様の着物を着て、綺麗に髪を整えた雷蔵に
その赤黒い血のような目隠しは不釣合い。
(しかし、欲望を駆り立てられるような、そんな。)

「三郎、僕は今何処を歩いている?」

「長い廊下だ、ピカピカの板張りの。」

「そうか、こんな感覚なのか、僕は畳と石の感覚しか知らないから。」

一緒にいたい。

三郎の願いも虚しく、今日は雷蔵の正式な婚約の日。
あと三つ先の襖の奥には相手の男が待っている。
あと二つ。
あと一つ。

「失礼致します、雷蔵様を・・・お連れ致しました。」

その言葉を聞いて雷蔵は頭を慌てて下げた。
三郎が頭を下げているのを感じたのだろう。
牢の中にいても、礼儀作法ぐらいは本で学んだ。

「おぉ・・・雷蔵!久しいな!」

「そのお声は父上!うれしゅうございます。」

当主は相手方の接待もどこへやら、
久々の我が子を思いきり抱きしめた。
雷蔵の目隠しはわずかに滲み、雷蔵もしっかりと
父の背中に腕を回す。

「さぁ、雷蔵お座り。三郎もこちらへ。」

「はい。」

当主は雷蔵を自分の隣に座らせ、雷蔵の隣に三郎を座らせた。
真ん中に雷蔵を置く形である。
相手方もそのような形で座っていた。

「三郎、雷蔵の目隠しを。」

「はい、失礼致します。」

三郎は雷蔵の前に膝を付き、雷蔵の目隠しに手をかけた。
後ろの結び目をゆっくりと解き、眩しくないように片手は
雷蔵の額に影になるように置いている。

静かに目隠しが解かれた。

「雷蔵様、ゆっくりと、お目をお開け下さい。」

「・・・・・・」

そこに広がったのは、蝋燭の明かりとは比べものにならないほどの
眩しい世界、輝く光。
それを背負って自分の前にいるのは、自分の分身。

「三郎、眩しいね・・・。」

「えぇ、じき慣れますよ。」

ニッコリ微笑む雷蔵が愛おしかった。
もうこのまま、この場所からどきたくない。
雷蔵本人の顔を相手に見せるのも腹立たしかったし、
何より雷蔵の開いたばかりの光の世界で相手を見せるのもむごいと思った。

「これそこの者、早う退かぬか。」

相手方の家従が三郎に言う。
三郎は聞こえるか聞こえないかの小さな舌打ちをして
雷蔵の前を退く。

首を動かしキョロキョロと辺りを見回す雷蔵。
絵で見た和室そのままの部屋。
それからやっと相手を見た。

「えぇと・・・こんにちは、初めまして。
 不破雷蔵と申します。」

先に挨拶をすべきだったかと内心で舌を出しながら、
雷蔵は深々と頭を下げた。
しかし、何故こんなに自分の前に畏まった人間がいるか分からない。
自分に向かい合わせの相手も固くなって緊張しているようだった。

「雷蔵、こちらは食満留三郎殿。食満家の嫡子殿だ。」

「はぁ・・・。」

気の抜けたような返事をする雷蔵に留三郎は
畳に頭をぶつける勢いで頭を下げた。

「ら、雷蔵殿、これから宜しくお願い致します。」

「は・・・?」

「お前はこの留三郎殿と夫婦になるのだよ。」

当主の言葉に目を見開く。
驚愕と、疑問と。
沸々と自分の中でわく、納得できない不満感。

「何故ですか?この着物を着ていようと僕は男です。」

「分かってくれ雷蔵。食満家と不破家が親族関係になるは
 互いの御家にとって願ってもない利益。
 この話はお前が生まれる前から決まっていたのだ。
 お前が男だからといって、婚姻はやめられない。」

「・・・・・・父上。」

心が入り乱れて、言葉に出来ない。
怒っているのか悲しんでいるのか喜んでいるのか、分からない。
御家が栄えることは喜ばしいこと。
しかしそのために自分が道具として使われることは。

とても心中は複雑で、顔を伏せ相手から背けた。

「雷蔵殿・・・。」

不安げに名前を呼ぶのは留三郎。
切れ長の瞳の凛々しい顔立ち。
この顔なら自分じゃなくとも何処ぞの良家の女子でも
娶れたろうにと雷蔵は留三郎を哀れんだ。

「・・・わかりました、留三郎殿、これから宜しくお願い致します。」

「あ・・・。」

「末永く、可愛がって頂きたく・・・。」

言葉と裏腹に、下げた面は何とも悲しげだった。
それは留三郎にはわからぬこと。
隣の三郎だけは、しっかりとその表情を見ていた。

(雷蔵・・・。)

苦しいのだね、悲しいのだね。
できることなら、私が代わってあげたい。
できることなら、この場にいる人間皆私の手で。

「では、雷蔵殿を食満家にお連れさせていただきます。」

「三郎、父上・・・。」

眉を下げて心配げな表情の雷蔵に当主は強く手を握った。
三郎は顔を伏せて膝の上で固く拳を握るだけだった。

「三郎・・・。」

悲しい、寂しげな声。

「お願いがございます、私も連れて行って下さいませ。」

三郎の口をするりと自然に滑り落ちたのは、
そんな懇願の言葉。
がばりとその場で頭を下げて、相手方の家に頼み込む。

「何故お前も連れて行かねばならんのだ。」

食満家の家従が三郎に冷たく言い放つ。
悔しさをぐっと堪えて三郎はさらに深く頭を下げた。

「私は幼い頃から忍びの技を叩き込まれております。
 雷蔵様の身代わり役として才能を買われたのもその頃です。
 私の役目が雷蔵様が無事婚姻されるまでのものだったとしても、
 お二人は立派な御家の人、常に危険が伴います。
 どうか、どうかこのまま、私を雷蔵様の身代わり役として・・・。」

必死な三郎の姿をみて、当主も一緒に頭を下げる。

「私からも頼みます、こちらの三郎は雷蔵を幼い頃から知っている
 唯一の理解者。忍びとしての実力も素晴らしいものです。
 雷蔵の身代わり役としてじゃなくとも、家の警護ぐらいは
 軽くやってのけるでしょう。」

「三郎、父上・・・!」

雷蔵がにこりと微笑む。
その柔らかい表情に目を奪われる留三郎。
食満家の家従は共に目を合わせて首を傾げあう。

「留三郎殿、僕からもお願い致します。
 どうか初めての雷蔵の我儘、聞いて下さいませ。」

留三郎の着物の裾をくいくいと控えめにひっぱりながら
雷蔵は上目遣いで留三郎に言った。
いつぞやに三郎が教えたおねだりの仕方をしっかりと
マスターしている。

「雷蔵殿がそういうなら・・・。」

頬を赤く染めながら、留三郎はそれを承諾した。

そうして雷蔵と三郎はともに食満家に入ることになった。
しかし、それが良かったことか、悪かったことか、
それを知るのはもう少し後になる。




つーづーく!

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ゴールデンウィークにバリバリ更新したかった・・・・゚・(ノД`;)・゚・
バイト無事終えました!今までありがとうございました。
明日仕事着を返してきます。本当にお世話になりました。
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