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忍たま乱太郎の5年生コンビを中心に取り扱った同人ブログです。最近は雷蔵がアイドル状態。 女性向け表現がありますので注意してください。
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「雷蔵様・・・」

深い深い地下牢の岩壁に反響するは
同じ顔の男の声。

「三郎なの?」

「えぇ、私です。」

暗闇には一つ、蝋燭に火が灯るだけ。
ぼんやりとした相手を柵越しから手を伸ばして捜す。

「寂しかったよ・・・早くここへ来て・・・。」

「はい、ただいま・・・。」





鉢屋三郎は代々優秀な忍びの家系に生まれた。
三郎自身の才能も我が身にその血を宿していることを
しっかりと証明していた。
特に変装の腕は素晴らしく、三郎の右に出るものはいなかった。

その才能を買われて不破家に雇われたのは6つの時。

不破の当主は幼くも忍びであった三郎にいった。
傍らには三郎と同じぐらいの大きさの人形を置いて。

「この子に化けよ。そしてこの不破家で暮らすのだ。
 金ならいくらでも出してやる、お前の命、買い受ける。」

「当主殿、いくら私とて、息をせぬ人形には化けられませぬ。」

「・・・すまぬな、いつものくせで、慣れとは怖いものだ。
 これは私の可愛い我が子を模した人形。
 片時も私の傍を離れさせたことはない。」

悲しい目をして当主は頭を下げた。
三郎は当主が何を言っているのか分からなかった。
我が子は死んだのか?
死んだ子を私に演じさせようというのか?

「お前には、雷蔵を見せてやらねばなるまい。
 ・・・私について来い、雷蔵に会わせてやろう。」

「有難き幸せ。」

三郎は当主の後に続いて隠し扉の奥へ進んでいく。
そこは暗く、春なのにひんやりと肌寒く、どこかじっとり湿っていた。
長い通路を抜け、石段を降りると、そこは頑丈な柵の牢獄。
そこから小さく光が見える。

「・・・雷蔵、私だよ。」

「父上・・・父上ですね・・・っ」

当主の声に反応を返した声は自分と同じくらいの幼い声だった。
心なしか涙が混ざった寂しげな声。
当主は足早に牢の前に行くと、跪き、中の人物と視線を合わせた。

「おぉ・・・っ私の可愛い息子・・・!大きくなって・・・!」

「父上、父上ぇ!寂しかったです、
 父上が最後に僕に会ってくださったのは
 寒い寒い、2年前の冬でした・・・!!
 僕は今でもその日を覚えております・・・!!」

小さな手がすっとのびて当主の両頬を撫でる。
当主もその手をとって幾度も幾度も口付けをした。
他人の三郎から見てこの二人は決して離れたがっているわけではないと
一瞬でわかるほどに愛情に満ちた光景で、郷の父母を少し思い出した。
水を差して悪いが、確認のため、聞かねばなるまい。

「当主殿、このお方が・・・。」

「あぁ、そうだ。雷蔵・・・私のただ一人の愛息子・・・。」

「父上・・・この子は・・・?」

夜目がきいてきた三郎の視界に映るは大きな丸い目をした幼子。
髪は結わず、柔らかいのかふわふわと肩に遊ばせたまま、
女子のようなべべを着ている。

「雷蔵、これは三郎という。お前の影武者になってくれる子だ。
 上で、お前の姿がなければ怪しまれてしまうだろう?
 しかし、お前がいてもお前の命が危ない。
 そこで、三郎を雇ったんだよ。」

「・・・父上、雷蔵は外に出てみたいです。」

「・・・許しておくれ、可愛い雷蔵。」

雷蔵は三郎を涙の溜まった目でキッと睨んだ。
おそらく自分の代わりに外で生きる三郎が羨ましくも
妬ましかったのだろう。
それが分かっていたから、三郎は特に頭にもこなかったし、
むしろ牢の中で暮らす雷蔵に哀れみと申し訳なさを感じた。

この子に何か自分がしてやれることは無いだろうか。

忍びになるべくして育てられた三郎に、初めて誰かのことを
考え、思いやるという気持ちが湧いた瞬間だった。
そんな感情は生まれたときから持ち合わせていないと思っていたのに。

「雷蔵様、お寂しいのですね。」

「そうだよ、僕いつもここで一人ぼっちなの。
 君はいいね、外の世界を見れるんだもの。」

「えぇ・・・でも、雷蔵様。
 私が貴方様の目になりましょう、耳になりましょう。
 私に時間がある限り、雷蔵様の元を訪れます。
 そうすれば、貴方は寂しくない。」

雷蔵は大きな目をさらに大きく開いて、三郎の素顔をじっと見た。
三郎の言葉に当主も嬉しそうに口元を緩ます。

「本当?三郎、僕の目や耳になってくれるの?」

「えぇ、貴方様が望むのなら手にも足にもなりましょう。」

「じゃぁ、友達になってくれる?」

首を傾げながら訊ねる雷蔵に、言葉が詰まった。
友達になっても構わない、しかし、雷蔵と自分はいわば主従の関係。
なんと答えていいか分からず、当主の顔を見る。

静かに微笑みながら頷いた。

「・・・もちろんです、雷蔵様、私でよければ、友にしてくださいませ。」

「うわぁ・・・!やったぁ!父上、雷蔵にも友達ができたよ!
 外では一緒に駆け回れないけど、三郎、たくさんここに来てね!
 たくさん僕に外のことを教えてね、約束だよ!」

花が綻ぶような可愛らしい笑顔に、つられて三郎も笑顔を向ける。
牢の中からのびる小さな手の小指を己の小指と絡めて指きりをした。
全く日に当たらないせいか、雷蔵の手は雪のように白かった。






「雷蔵様。」

「三郎、あぁ、三郎・・・。」

下に敷かれた畳を膝で這い歩き、三郎の元へ近寄っていく。
三郎が持っていた蝋燭に火をつける。
二人の間でボウ・・・と燃えだした火はいつも以上に輝いて見えた。

「三郎、いつもごめんね、迷惑だよね・・・。
 牢は暗いし、湿っぽいし、石段は膝に悪いだろうし・・・。」

「・・・何をおっしゃいます雷蔵様。私は遠い昔、雷蔵様に
 全てを捧げると誓った身でございます。
 その私が、雷蔵様のご希望を煩わしいなど思うはずがありません。」

「・・・いいよ、敬語もやめて。この台詞も言い飽きたよ・・・。」

寂しそうな悲しそうな目をする雷蔵に、
三郎は胸が締め付けられる思いだった。

ふと、部屋の中を手に持っている蝋燭で照らす。
立派な魚の煮物が少々突付かれただけで、
白飯も味噌汁も漬物も何もかも残されている。

「雷蔵・・・、食事はちゃんと摂ってくれ、またそんなに残して・・・。」

思わず眉を寄せて雷蔵に言う。
雷蔵はしょんぼりと俯いて三郎に言い訳を。

「・・・真っ暗では、何を食べても美味しくないから・・・。
 それに、最近食欲がわかなくて・・・。」

雷蔵の気持ちが痛いほどわかる。
三郎はそれ以上は何も言わなかった。
かわりに、雷蔵が希望していた物を差し出す。

「ほら雷蔵、本だよ。それに花も。」

雷蔵はそれを見て嬉しそうに笑った。
牢から手を伸ばして三郎からそれを受け取る。

「ありがとう三郎。嬉しい。」

「雷蔵は本が好きだものな。他にほしい物があったら
 遠慮なくいってくれ、持ってくるよ。」

それから二人は話し込む。
時間を忘れて、二人の世界へ浸るのだ。

しかし、それを融け合せないようにと隔てるのは
柵の牢獄、鉄の鍵。

「三郎、歌って、いつもの歌。」

「お安い御用だ。」

三郎の震える喉から出てくるのは美しい歌声。
それを聞くと雷蔵の心はいつも穏やかになって、
そして何もかもを浄化してくれるような気がした。

伸ばした手をしっかり握ってくれる手が、
雷蔵にとって全てだった。

(いいや、全てだなんて、全て以上の、先の先。)

「・・・外に出てみたい・・・。」

生まれて一度も明るい世界を見ることはなかった。
恋焦がれてやまない、外の光。

静かに涙を溢す雷蔵に、
三郎は甘い愛の歌を歌い続けるだけだった。





つづく!

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長くなりそうなので、分けます!
3回になるか、2回になるか・・・。(´ω`)

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