七夕

「今日七夕なんだねぇ。」

雷蔵が短冊を持って嬉しそうに駆けていった低学年をみて言った。
だがこの時期は梅雨がまだ終わっておらず、一年のうちに一度しか会えない織姫と彦星はいい迷惑な時期に会うことを許されたものだ。

「雷蔵。」

「あ、兵助。」

「私もいるだろ。」

そこに兵助と三郎が現れる。
しかし、雷蔵は三郎を徹底的に無視である。
それもそのはず。
思い起こせば今日の朝の話になるのだが、雷蔵はぐっすり気持ち良さそうな顔をして寝ていた。
そんな様子をじっと見ていられるはずもなく、三郎はもしょもしょと雷蔵の布団の中に潜り込み、間直の雷蔵の鎖骨やら首筋に口付け、舐めた。
しかしそこまでされても雷蔵はまだ起きなかったのである。

鈍感にもほどがあるが、雷蔵は身体の感度はいい。

無意識に声を上げてしまっていた。
興奮した三郎の行動はエスカレート、手を雷蔵の着物へＩＮ、首筋をガプリ。
その痛さと違和感に雷蔵が起きて、強烈なパンチが三郎へ炸裂！！

とまぁこんな感じである。
つまりは、雷蔵は三郎にキレていた。


「さっき一年生が短冊もって走っていった。かわいかったよ。」

「あ、俺も･･「私も見た見た！！でも雷蔵の方が可愛い！！だから許して！！」

「てめぇとなんか会話してねぇンだよ。引き伸ばすぞ。」

「ひ、引き伸ばす！？」

言われた本人よりその隣の兵助のほうが、いつもの雷蔵の可愛い笑顔のままでのその発言にびびっていた。
三郎は三郎で口から魂が抜けている。
今日は七夕というのに、こちらの織姫と彦星はとんでもないことになっている。

（癪にさわるが、三郎に協力してやるか･･･。）

「雷蔵、許してやれば？三郎だって悪気があってしたわけじゃないらしいし、三郎の抑えようのない本能だよ。」

「「兵助･･･。」」

雷蔵は眉を下げて、三郎は目をパチクリさせて、兵助をみた。
ちなみにこの三人の普段の関係は、兵助≧雷蔵＞＞＞＞＞三郎＞＞兵助であって、絵で書くと丁度トライアングルの形になる。
三郎は

（でかした兵助！！私よりはできた人間じゃないが、礼を言ってやる！！）

と思っていたし、雷蔵は雷蔵で、

（兵助が言うなら許してやってもいいかな･･･、これ以上バカ三郎の迷惑、兵助にかけられないもんね･･･。）

と思っていた。
兵助に対する考え方が随分と違う二人である。
雷蔵は諦めたように大きな溜息をついた。

「･･･三郎、今回は兵助に免じて許してあげる。でも今度したらもう絶交だからね。」

「らいぞぉ・・・！！」

そのとたん、三郎が雷蔵に飛びつく。
相当嬉しいのか、どさくさ紛れに雷蔵に頬擦りまでしている。

「あ、こら！舌の根の乾かぬうちにーっ」

「いいじゃないか、私は口下手だから、こんな形でしか雷蔵が好きだと言えない。今日は七夕だ。今日ぐらい一年に一度出会える恋人同士の気分に共に浸ってくれ。」

「･･･何いってんの、三郎は口下手なんてほど遠いし、僕たち恋人同士じゃないじゃない。」

「雷蔵･･･。」

「････。」


兵助はその場から離れたが、遠目からでも雷蔵が三郎の肩に顔を埋め、遠慮がちにすりついたのが見えた。
何だか、空の上の織姫と彦星顔負けの甘い雰囲気が流れている。

「･･･見せ付けるなぁ･･･。」

（俺が譲ってやったんだから、大事にしろよ。）

そう思って歩いていく兵助の背中には、走ってくる綾部と斉藤が見えていた。




「雷蔵･･･。」

「何････？あ････三郎、人前じゃ･･･ダメ･･。」

小さく雷蔵が抵抗したが、三郎はかまわず口づけた。
雷蔵は珍しく口付け後も三郎の腕の中におさまって、目を伏せて頬を染めていた。

その姿は、君の本気の告白をずっと待っているんだよ･･･？と言わんばかりであった。




「委員会中に、また不破先輩への愛を延々と聞かされちゃ僕の身がもたないからね。」

「庄左ヱ門、何お願いしたの？」

「ふふ、秘密♪･･･でも、僕のお願い事でもあり、他人のお願い事でもあるなぁ～･･･。」



ゆれる笹には沢山の短冊。
可愛い崩れた字の中に、キレイに整った字が目立つ。


『鉢屋先輩が不破先輩と早く幸せになれますように。』



終わり☆★

ウチの兵助は雷蔵が好きだった節があるのです。
でも、雷蔵が三郎選んじゃったから仕方ないみたいな。

綾→兵←斉　が私は好きです★☆

庄ちゃんも大好きですＶｖ
健気な真面目な子！！大好きだ！！