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忍たま乱太郎の5年生コンビを中心に取り扱った同人ブログです。最近は雷蔵がアイドル状態。 女性向け表現がありますので注意してください。
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「おはよう三郎!」

毎朝の三郎のお迎えの自転車の後ろに飛び乗り、雷蔵が輝く笑顔で挨拶をしてくる。
それだけで、三郎は一日のやる気が溢れ出るのだ。

「おー今日も良い天気だなァ~。」

「良すぎて暑いぐらい!三郎の背中も熱い?僕がくっついてるから。」

くすくすと笑って雷蔵が、わざと背中に自分の胸と腹をくっつけてくる雷蔵に、三郎は内心ドギマギしながら笑って軽く咎める。

「こら~雷蔵君~やめなさい~。」

「ヒャァー朝から斜堂先生はやめてっ!」

傍から見れば、仲の良い男友達の朝の登校風景。
けれど、三郎にとっては愛しい人とのラブラブ(?)幸せな登校なのだ。
夏の日差しは朝から強く暑いが、雷蔵といられるだけで、そんなもんどーでも良くなる。

願わくば、恋人という関係になりたいが、それは一生叶わないと、この間屋上で痛感した。


『・・・ずっと親友、大親友だから、三郎。』


あの穏やかで優しい雷蔵の笑顔が忘れられない。
雷蔵の瞳に、俺が一人の男として映ることはないのだと、あの言葉でわかった。
おかげで、柄にもなく屋上で声上げて号泣して、教室戻った時に雷蔵に『三郎?!どうしたの?!転んだの?!』なんて心配されちゃって、おいおい、誰のせいだよってね、ハッ(自嘲。

ボーとそんなことを考えて、雷蔵は雷蔵で流れる景色を楽しんでいると、アッという間に学校に着いた。
二人の通う学校は、古風な習慣が続いていて、男女は別館で学ぶことになっている。
つまり、学校生活は男子校、女子校のようなもの。
ぎりぎり昇降口と図書館、そして体育館だけは、男女の交流のある場所だった。

「さーて、今日も一日がんばりますかい・・・って、オイオイ。」

三郎が靴箱をあけた瞬間、バサバサッと2~3つの封筒が落ちる。
ハートマークのシールと丸文字で『鉢屋三郎様♡』と書かれているのを見ると、多分どっかの女からのラブレターだろう。

毎度のことで、うざってぇなぁー・・・と三郎がしぶしぶカバンの中にねじ込んでいるのを、複雑な気持ちで雷蔵は眺めながら、自分の靴箱をあける。

ちょんと上履きの上にのった桃色の封筒。

「?」

不思議に思ってスッと手に取る。
それは意外と上品な封筒で、ただの桃色ではなく、濃淡がついていて、端に桜の淡い絵が描いてあることに気づいた。
綺麗だなァなんてのほほんと見て、裏返すと、そこには整った字で『不破雷蔵様』と書かれていた。

雷蔵がマジマジとその封筒を見ている姿を見て、三郎は飛びついた。
そりゃもう強力な磁力でくっついてきたのかと思うぐらい、ビターン!!と。

「らららら、雷蔵っ!!それはっもしかしてっ!!!」

「うーん・・・ラブレター・・・?」

照れくさそうに頬を染めて笑った雷蔵に、頭を殴られたようなショックを受けて三郎はテイションががた落ちした。
今日も一日・・・がんばれるかっ!!!!



『 不破雷蔵様

いきなりのお手紙申し訳ございません。
ですが私、もう自分の気持ちに抑えがつかないのです。
雷蔵様のお姿を図書館で、登校中で見るだけで、私の胸は張り裂けそうなほどときめきます。

一目見たときから、雷蔵様を深くお慕い申し上げております。

雷蔵様の笑顔は、私の生きる糧になるのです。
できることならば、ずっと雷蔵様のお傍にいたいものです・・・。

今日の昼休み、校庭の一番大きな木下で、雷蔵様をお待ちしております。
どうか、どうか、いらっしゃってくださいませ。
そして、私に良い返事をお聞かせくださいませ、お願い申し上げます。

二年桜組  雨竜 桃香 』



「・・・な~んでぇっ!!今どき清純ぶっちゃってさっ!!もろウソくさッ!!」

「三郎!勝手に見るなよっ!!」

教室で授業の終わった中休みに、三郎が雷蔵の机から封筒を引っ張り出して読んでいた。
雷蔵は真っ赤になって慌てて三郎から手紙をひったくるが、三郎にとっては気が気じゃない。

兵助は雷蔵がラブレターをもらったと朝の三郎の大騒ぎで知っていたので、面白がって移動教室で戻ってくるついでに雷蔵達のクラスに寄っていた。

「お、これかぁ~雷蔵がもらったの。雨竜さんから?!うわぁっ!!あの良家のお嬢さんじゃん!!」

「えっ?!僕、全然知らないんだけど・・・?」

「知らんで良い。あの女、天然ぶって鼻につく。」

三郎の口調はキツい、それもそのはずだ。
もし、この女に会って雷蔵が気に入って、付き合うことになって、『ごめんね三郎、今日は彼女と帰るから。』なんていわれることになってみろ。

俺はその女を殺してやるっ!!!!

と兵助の小脇に挟んだノートを引き抜いてバリィッ!!と真っ二つに引き裂いた。
「俺のノートーッッ!!!!」という兵助の叫び声など耳に入れず、雷蔵の方に向き直る。

「雷蔵、昼休み、行くのか?」

「・・・うん、行ってくる。」

あぁ、俺は今どんな顔してるんだろう。
心臓が止まりそうなほど、痛んだ。

「・・・そう・・・か・・・。」

きっと傷ついてる顔してるんだろうな。




昼はつまらん兵助の相手をして、飯を食い、雷蔵のいない昼飯の不味さを改めて感じながら、雷蔵のことを考えていた。

雷蔵は女になど興味はない・・・はずだと思いたい。
けれど、雷蔵だって年頃だ、女に興味がないほうがあり得ないだろう。
雷蔵は、俺に恋愛感情をもってくれることはないのだろうか?

・・・同性だ、そっちのほうが可能性は低いのかもしれない。
俺は雷蔵がこんなにも好きでたまらないのに、雷蔵は・・・・・・。
・・・襲うって手はできれば使いたくない、でも、そうせざるを得なくなったら・・・。

「・・・俺って、繊細な男だよなぁ~・・・。」

「寝言は寝て言えよ、三郎。」

雑誌を読む兵助の頬をつねりあげながら、三郎は大きな溜め息をついた。




「雷蔵。」

部活時になって、(今日は三郎はテニス部の練習に付き合ってやっていた)いつもの弓道部の木枠の窓からヒョイと顔を出す。
雷蔵がそのとき、丁度矢を放って、それは真直ぐ的の真ん中を射た。
三郎はそんな雷蔵の凛とした美しさに見とれて、大蛇の如く鋭い目をしたフェイシング部の部長が近づいてきていることに気づけなかった。

「貴様、またきたのか、この愚か者め。」

いきなりそんな・・・愚か者なんて言われたって。

「・・・いいじゃないスか、雷蔵と四時間目以来、まともに顔さえ合わせてないんだから!」

そうなのだ、雷蔵は五時間目ギリギリに帰ってきて、バタバタと部活に行ってしまい、三郎は雷蔵の背中しか見つめることができなかったのだ。
寂しくて仕方がない、部活中にここで少し話すくらい許されるだろう。

「あ、三郎。」

雷蔵が三郎に気づいて、仙蔵も仕方がないなといわんばかりにしぶしぶその場から立ち退いた。
雷蔵が柔らかい笑顔でトタトタと近づいてくるだけで、胸がドキドキと騒いだ。

「雷蔵、あ、あのな。」

ずっと気になっていた、あの女からの告白の返事。

お前、付き合うことになったのか?

「断わった。」

「え。」

先に雷蔵に言われてしまって少し拍子抜けしてしまったが、三郎は木枠にしがみついて顔を接近させる。

「ほ、ホントか?!何で?!」

「だって、僕、まだ女の子と付き合うなんて・・・できないし、恥ずかしいもん。・・・可愛い子だった、黒髪で、色が白くて、絵に描いたようなおしとやかな子。僕のタイプだったけど、何か、違うなァって。」

「雷蔵・・・。」

そっと雷蔵が手を出してきた。
木枠は雷蔵の胸の位置ぐらい、三郎の顔が出る位置ぐらいだから、雷蔵が三郎を見下ろす形になるが、三郎はそれさえも心地いいように感じた。
雷蔵の手に、己の手を絡める、雷蔵はふっと優しく笑った。

「三郎と、一緒にいるのが今は一番だから・・・。三郎が、一番だから・・・。」

「雷蔵、俺も・・・。俺も雷蔵が一番だ・・・。」

だから、女とも別れた、本当だ。
ギュウッ・・・と雷蔵の手を握る手の力を強くして、雷蔵を真摯な瞳で見つめる。
雷蔵は小首をかしげて、潤んだ瞳(目じりには涙さえ浮かんでいたかもしれない)、桃色の頬で、さらに微笑んだ。

「・・・本当?・・・嬉しい・・・。」

そのとき、俺は雷蔵が言葉で発さなくても、何を言っているか分かるような気がした。
温かい手、包み込むような穏やかな微笑み。
俺は、そう、ちゃんと感じとっていた。

「それじゃ・・・雷蔵・・・。」

なのに、それを信じるのが恐くて、逃げた。

「っ、三郎・・・。」

切なそうに名を呼ぶ声が、さらに俺を追い詰めるように感じて、絡めた指をゆっくり解いていく。
しかし、雷蔵がまた自ら俺の指に己の指を絡めてきた。

何も、言わない。
けれど、見つめた瞳は潤んで、ただ切なさを伝えていて。

さっと雷蔵の指を解いて、俺は走り去った。
きっと、雷蔵は、俺が哀願するほどに欲していた気持ちを伝えていてくれたのだろう。
でも、あぁ、それを信じるには、もう俺は不安の闇に落ちすぎた。

臆病で、どうしようもない俺を、お前は許してくれるかい・・・?


「本当に・・・愚か者だな・・・。」

あの人の声が聞こえた気がした。


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