忍者ブログ
忍たま乱太郎の5年生コンビを中心に取り扱った同人ブログです。最近は雷蔵がアイドル状態。 女性向け表現がありますので注意してください。
<<09   2024/10 1 2 3 4 56 7 8 9 10 11 1213 14 15 16 17 18 1920 21 22 23 24 25 2627 28 29 30 31   11>>


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「雷蔵様・・・」

深い深い地下牢の岩壁に反響するは
同じ顔の男の声。

「三郎なの?」

「えぇ、私です。」

暗闇には一つ、蝋燭に火が灯るだけ。
ぼんやりとした相手を柵越しから手を伸ばして捜す。

「寂しかったよ・・・早くここへ来て・・・。」

「はい、ただいま・・・。」





鉢屋三郎は代々優秀な忍びの家系に生まれた。
三郎自身の才能も我が身にその血を宿していることを
しっかりと証明していた。
特に変装の腕は素晴らしく、三郎の右に出るものはいなかった。

その才能を買われて不破家に雇われたのは6つの時。

不破の当主は幼くも忍びであった三郎にいった。
傍らには三郎と同じぐらいの大きさの人形を置いて。

「この子に化けよ。そしてこの不破家で暮らすのだ。
 金ならいくらでも出してやる、お前の命、買い受ける。」

「当主殿、いくら私とて、息をせぬ人形には化けられませぬ。」

「・・・すまぬな、いつものくせで、慣れとは怖いものだ。
 これは私の可愛い我が子を模した人形。
 片時も私の傍を離れさせたことはない。」

悲しい目をして当主は頭を下げた。
三郎は当主が何を言っているのか分からなかった。
我が子は死んだのか?
死んだ子を私に演じさせようというのか?

「お前には、雷蔵を見せてやらねばなるまい。
 ・・・私について来い、雷蔵に会わせてやろう。」

「有難き幸せ。」

三郎は当主の後に続いて隠し扉の奥へ進んでいく。
そこは暗く、春なのにひんやりと肌寒く、どこかじっとり湿っていた。
長い通路を抜け、石段を降りると、そこは頑丈な柵の牢獄。
そこから小さく光が見える。

「・・・雷蔵、私だよ。」

「父上・・・父上ですね・・・っ」

当主の声に反応を返した声は自分と同じくらいの幼い声だった。
心なしか涙が混ざった寂しげな声。
当主は足早に牢の前に行くと、跪き、中の人物と視線を合わせた。

「おぉ・・・っ私の可愛い息子・・・!大きくなって・・・!」

「父上、父上ぇ!寂しかったです、
 父上が最後に僕に会ってくださったのは
 寒い寒い、2年前の冬でした・・・!!
 僕は今でもその日を覚えております・・・!!」

小さな手がすっとのびて当主の両頬を撫でる。
当主もその手をとって幾度も幾度も口付けをした。
他人の三郎から見てこの二人は決して離れたがっているわけではないと
一瞬でわかるほどに愛情に満ちた光景で、郷の父母を少し思い出した。
水を差して悪いが、確認のため、聞かねばなるまい。

「当主殿、このお方が・・・。」

「あぁ、そうだ。雷蔵・・・私のただ一人の愛息子・・・。」

「父上・・・この子は・・・?」

夜目がきいてきた三郎の視界に映るは大きな丸い目をした幼子。
髪は結わず、柔らかいのかふわふわと肩に遊ばせたまま、
女子のようなべべを着ている。

「雷蔵、これは三郎という。お前の影武者になってくれる子だ。
 上で、お前の姿がなければ怪しまれてしまうだろう?
 しかし、お前がいてもお前の命が危ない。
 そこで、三郎を雇ったんだよ。」

「・・・父上、雷蔵は外に出てみたいです。」

「・・・許しておくれ、可愛い雷蔵。」

雷蔵は三郎を涙の溜まった目でキッと睨んだ。
おそらく自分の代わりに外で生きる三郎が羨ましくも
妬ましかったのだろう。
それが分かっていたから、三郎は特に頭にもこなかったし、
むしろ牢の中で暮らす雷蔵に哀れみと申し訳なさを感じた。

この子に何か自分がしてやれることは無いだろうか。

忍びになるべくして育てられた三郎に、初めて誰かのことを
考え、思いやるという気持ちが湧いた瞬間だった。
そんな感情は生まれたときから持ち合わせていないと思っていたのに。

「雷蔵様、お寂しいのですね。」

「そうだよ、僕いつもここで一人ぼっちなの。
 君はいいね、外の世界を見れるんだもの。」

「えぇ・・・でも、雷蔵様。
 私が貴方様の目になりましょう、耳になりましょう。
 私に時間がある限り、雷蔵様の元を訪れます。
 そうすれば、貴方は寂しくない。」

雷蔵は大きな目をさらに大きく開いて、三郎の素顔をじっと見た。
三郎の言葉に当主も嬉しそうに口元を緩ます。

「本当?三郎、僕の目や耳になってくれるの?」

「えぇ、貴方様が望むのなら手にも足にもなりましょう。」

「じゃぁ、友達になってくれる?」

首を傾げながら訊ねる雷蔵に、言葉が詰まった。
友達になっても構わない、しかし、雷蔵と自分はいわば主従の関係。
なんと答えていいか分からず、当主の顔を見る。

静かに微笑みながら頷いた。

「・・・もちろんです、雷蔵様、私でよければ、友にしてくださいませ。」

「うわぁ・・・!やったぁ!父上、雷蔵にも友達ができたよ!
 外では一緒に駆け回れないけど、三郎、たくさんここに来てね!
 たくさん僕に外のことを教えてね、約束だよ!」

花が綻ぶような可愛らしい笑顔に、つられて三郎も笑顔を向ける。
牢の中からのびる小さな手の小指を己の小指と絡めて指きりをした。
全く日に当たらないせいか、雷蔵の手は雪のように白かった。






「雷蔵様。」

「三郎、あぁ、三郎・・・。」

下に敷かれた畳を膝で這い歩き、三郎の元へ近寄っていく。
三郎が持っていた蝋燭に火をつける。
二人の間でボウ・・・と燃えだした火はいつも以上に輝いて見えた。

「三郎、いつもごめんね、迷惑だよね・・・。
 牢は暗いし、湿っぽいし、石段は膝に悪いだろうし・・・。」

「・・・何をおっしゃいます雷蔵様。私は遠い昔、雷蔵様に
 全てを捧げると誓った身でございます。
 その私が、雷蔵様のご希望を煩わしいなど思うはずがありません。」

「・・・いいよ、敬語もやめて。この台詞も言い飽きたよ・・・。」

寂しそうな悲しそうな目をする雷蔵に、
三郎は胸が締め付けられる思いだった。

ふと、部屋の中を手に持っている蝋燭で照らす。
立派な魚の煮物が少々突付かれただけで、
白飯も味噌汁も漬物も何もかも残されている。

「雷蔵・・・、食事はちゃんと摂ってくれ、またそんなに残して・・・。」

思わず眉を寄せて雷蔵に言う。
雷蔵はしょんぼりと俯いて三郎に言い訳を。

「・・・真っ暗では、何を食べても美味しくないから・・・。
 それに、最近食欲がわかなくて・・・。」

雷蔵の気持ちが痛いほどわかる。
三郎はそれ以上は何も言わなかった。
かわりに、雷蔵が希望していた物を差し出す。

「ほら雷蔵、本だよ。それに花も。」

雷蔵はそれを見て嬉しそうに笑った。
牢から手を伸ばして三郎からそれを受け取る。

「ありがとう三郎。嬉しい。」

「雷蔵は本が好きだものな。他にほしい物があったら
 遠慮なくいってくれ、持ってくるよ。」

それから二人は話し込む。
時間を忘れて、二人の世界へ浸るのだ。

しかし、それを融け合せないようにと隔てるのは
柵の牢獄、鉄の鍵。

「三郎、歌って、いつもの歌。」

「お安い御用だ。」

三郎の震える喉から出てくるのは美しい歌声。
それを聞くと雷蔵の心はいつも穏やかになって、
そして何もかもを浄化してくれるような気がした。

伸ばした手をしっかり握ってくれる手が、
雷蔵にとって全てだった。

(いいや、全てだなんて、全て以上の、先の先。)

「・・・外に出てみたい・・・。」

生まれて一度も明るい世界を見ることはなかった。
恋焦がれてやまない、外の光。

静かに涙を溢す雷蔵に、
三郎は甘い愛の歌を歌い続けるだけだった。





つづく!

clap-5nen.gif

*****************************************************************************

長くなりそうなので、分けます!
3回になるか、2回になるか・・・。(´ω`)

↓↓ご協力お願いします!

PR
拍手ありがとうございます!!
こんな更新もしていないサイトに・・・ひひぃん!感涙

バイトはGWまでです。
今まで皆さんにたくさん心配かけてしまいました。(´ω`)
初めてのバイトだったこともあって
なかなか余裕が持てずにダラダラになってしまって
申し訳なかったです。

これからは出来る限り更新したいと思いますvv
しかーし、お嬢様方、私学生の身でございました。

テストが近い。

・・・でもまぁ、時間を作ってできるだけ更新しますねvv
だって鉢雷ラバーだから!
雷蔵が大好きだからー!!(あ、三郎もね笑)


返信ですvv

miyacさんvv

うわーいmiyacさんにそう言っていただけると嬉しい~vv
そうですよね、昔はこれ以上ないほど利土井を愛してた身です。
ときどきは熱がぶり返しますよね笑vv(*´Å`*)
雷蔵が可愛いから可愛く書いてしまうのですね笑!
自分の欲目がでてます笑vv

マシュマロありがとうございますー!
でも日記にも書きましたけど、
今の状態じゃ出るかどうか分からないのです。(´・ω・`)ショボン
できるだけ出したいとは思っているのですが・・・!

もし出せるのなら、通販全然オッケーです!
ていうかむしろ通販主流になるかもしれませんし~vv
何よりmiyacさんが欲しいと言ってくださっているしvvvv

私はイベントに直参で持って行きたいのですが、
多分、委託になってしまうのではないかと・・・。泣
希望と現実はちがうのね・・・・゚・(ノД`;)・゚・
直参したーい!!('A`)皆さんと会いたーい、話したーい!!('A`)
今度大阪でありますよね。あれどうしようかなー。
姉の所に転がり込むのは大丈夫だと思うんですが、
行き方がきっとわからない笑笑!!

バイトの方もありがとうございます。
ウチの親もそういいます笑。
私にとったら『そんなことできるわけなかろーもん!汗』みたいな。笑
初めてですから手抜きの要領がわからなくてですね笑。
でもいい経験をさせていただいたと思ってますvv

miyacさん~サイトの漫画のあれはー!!!
読みたい!!(*´∀`) 読みたいですよ!!笑
あんなにチラ見せして誘ってるのに、
miyacさんてば~もう~、いや~んvv(落ち着け
miyacさんには画力も文才も十分あると思いますvv
miyacさんのDOJIN誌出たら私絶対買いますもん笑vv
その時はぜひ通販宜しくお願いしますvv

その下の記事の長次の横に新妻のように座っている雷蔵。
ヤバスですね!!可愛い!!゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
旦那様、って微笑みながら(テレ気味)言ってください。
お願いします。(土下座

何だかキモイ返信になってしまって申し訳ありません。
拍手ありがとうございました、これからも頑張りますのでよろしくおねがいしますvv
拍手ありがとうございます!!

最後に日記を書いたのは18日ですね。
もうすぐで10日経とうとしてます・・・。
書きたい、NETAはたくさんある・・・。
(いや、やっぱりそんな日常嫌だけど。)

もぎょー!誰か私をさらって行って!(ウゼ!
一緒に誰かイベント行こうよ!
いつになるかわからないけど、いつか行こうよ!
あぁ~・・・できることなら今年の夏、
本当に友達と東京に行きたいYO!(*´Å`*)

・・・上の発言は『モユコきもウザイ。』ぐらいの気持ちで
そっと見てやってください。


返信です!

むいろさんvv

えぇぇー!本当ですかー!(*´∀`)
やったー!こんなに早くにいいよって言ってくださる絵師様が
見つかるなんてー!゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚
きっとウチのショボスなサイトにはもう名乗り出てくださる絵師様は
いらっしゃらないと思います・・・。(モユコはとてもマイナス思考です
しかし一応しばらく様子を見てみます。
むいろさんにお頼み申すことになる可能性がとてつもなく大きいですが。笑
そのときはよろしくお願い致します。(深々

バイト頑張ります、あともう少しです・・・!
自分がバイトをして改めて社会人の大人たちの凄さを知りました!
もうスーツの男性女性を見たら敬礼するぐらいの勢いですよ!
すごいなぁ・・・私ニートにならないかな・・・。(心配

むいろさんのその言葉にいつもほっとさせられます。
そうですよね、マイペースで運営していくのが一番ですよね。
私にとってここは自分の妄想吐き出すところですから~!笑(*´∀`)
むいろさんも原稿頑張って下さいませー!
あの・・・今回も通販は行ってくださいますか・・・。(ハァハァ
名古屋にはいけないですから・・・お願いします!

拍手ありがとうございました、これからも頑張りますので宜しくお願いします!


華さんvv

うはー!ありがとうございます!
そう言ってもらえて嬉しいです!
華さんが見てやンよ!といってくださるなら出さねば笑!!
ウチはブログですからねー、更新をチマチマ見てないと
下にドンドンながれて行っちゃって読みにくくなりますもんねー。
どうにかならないかなー、うぅん。(´ω`)
それに華さんもお忙しいでしょうし・・・お仕事お疲れ様です。

バイト頑張ります!
働くって大変なことなんですね!
頑張れ社会、頑張れ日本!(もう何言ってるか自分でも分からない。
私にはテキパキ動かなきゃいけない仕事は向いていないかもしれない笑。
できることならデスクワーク系or研究職につきたいです笑。

拍手ありがとうございました!これからも頑張りますので宜しくお願いしますvv
現代版の鉢雷です。
しかも、鉢屋さんウザーい!(可愛いウザさじゃないです)
そんなのは耐えられん!という方はおやめになって~!

****************************************************************************

夕日の差しこむ化学実験室。
どこか不安げに廊下を歩く男子生徒が一人。
ドアの前に立つと、気配で分かったようで
部屋の中にいる人物が呼ぶ。

「入っておいで。」

ドアに手をかけて俯き、胸いっぱいに空気を一気に吸い込んで
ただ真っ白の天井を仰いだ。
腹をくくってゆっくりドアを開ける。

「失礼します・・・。」




高校三年生になる不破雷蔵は、誰にも好かれる良い子であった。
教師達の評判ももちろんよく、成績も優秀。
それを鼻にかけることもなく、学習内容が理解できずに困っている
生徒にはしっかり丁寧に教えてくれる。

「雷蔵は優しいなぁ。」

その言葉にいつも頬を染めてはにかんで笑う。

「そんなことないよ。」

そんな謙虚な人柄も人に好まれやすかったのかもしれない。
雷蔵は自分をとりまく全ての人々に愛されていた。
大切にされていた。

そんなある日、化学の専門教師が倒れた。
脳梗塞で、しばらくの入院が必要になったそうだった。
代わりの教師がくるとのことで、皆どこかそわそわと
その教師を待つ。

もともとこの高校は質の良い教師を選ぶことで有名であった。
倒れた教師もなかなかの腕であったし、周りの教師だってそうである。
雷蔵は自分の知らないことを学ぶことに楽しさを感じていたので
それをきっちり教えてくれる教師を尊敬していた。

その教師が倒れれば心配になるのは当たり前で、
それでも立ち止まっていられない自分の身を少し、悔しく思った。

「オイッ!代理の化学教師の顔を見たか?!」

化学教科係のクラスメイトがプリントを両手いっぱいに抱えて、
教室のドアをピシャーンッと乱暴に開ける。
何事かと教室にいた生徒皆そちらに注目し、
息を切らした口からその続きが出るのを待つ。

「・・・雷蔵の生き写しだ・・・!」

視線は一気に雷蔵に注がれ、ザワッと教室がざわつき始める。
もう少しでその本人がくる。
初授業でこの状態はマズイと雷蔵は立ち上がって

「ね、皆落ち着こうよ、もうすぐ先生も来るしさ、その時分かるよ。」

と呼びかけた。
その言葉を聞いて、そうだな・・・と一度皆席につき、
代理教師を待った。

ガラリと開く前のドア。
入ってきたのは確かに雷蔵の生き写しの男。

ワッ!!と教室が爆発した。
いや、皆の緊張と好奇の気持ちが破裂したというか、
右から左から前から後ろから、雷蔵に手が伸びて

「オイ、見ろよ雷蔵!お前そのままだ!」

「お前生き別れの兄弟でもいたのか?!」

そんなことばかり聞いてくる。
雷蔵本人も驚いていた。

母からは何も聞いていないし、何よりこの世に自分と全く同じ
姿の人間がいるとも思っていなかった。
呆然とする雷蔵を見て、にや、と笑ってみせた代理教師。

歳はいくつぐらいだろうか、もしかして同じじゃないだろうか。

雷蔵は嫌に高鳴る胸をぎゅっと押さえて背中に汗をかく。
周りは興奮しているが、自分はそれどころか恐ろしささえ感じている。
これがもしドッペルゲンガーというものなら自分は死んでしまう。

「静かに、出席をとる。」

いたって冷静に手持ちの自分の出席簿を開く。
淡々と生徒の名前を呼んでいき、それに返事を返す。

「不破雷蔵・・・」

「は、い」

見つめられる。
その目が少し、恐い。
こんな気持ちになったのは初めてだった。
そんな雷蔵の気持ちを知ってか知らずか、
その代理教師は教壇をボールペンの尻で小突きながら
ニィッと笑う。

「こんなに私とそっくりな人間がいるとはなぁ。
 流石に驚いたよ、雷蔵。」

「は、ぁ・・・僕もです。」

控えめに微笑む雷蔵に満足したのか、
あの虚ろでいて鋭い瞳をやめてくれた。

「君は優等生だと聞いたよ、楽しみだ。」

「そんな、期待しないでください。
 がっかりなさる顔はできるだけ見たくありません。」

代理教師は雷蔵と軽く話して、出席の続きを始める。
背中をツンッと突付く指に応え、身体を後ろに傾ける。

(雷蔵、いきなり気に入られてんな。)

(僕もわかんないよ、本当にいきなりなんだもん。)

コショコショと小さく言い合いながら、出席を取り終わった
教師は黒板に向き合い、白チョークを手に取った。

「まず自己紹介をしておこうか。私は鉢屋三郎という。
 一応博士号も持っているので、わからないところは
 どんどん聞いてくれて構わないからな。」

大きく書かれた名前をボーと眺める。
頭の中の記憶を探ってもそんな人はいない。
雷蔵は首を傾げる。

「君たちのことは授業をしていく間に覚えようと思う。
 そっちの方が私は覚えやすいんだ。
 当てられた問題はしっかり答えてくれよー。」

そうして代理教師こと三郎は生徒達に笑われながら授業を始めた。
教室の中で一人、雷蔵だけがまだ納得できずに
教科書もノートも閉じたままだった。




三郎の授業はわかりやすかった。
頭のよさと人に教えられる器用さは別物なのを
雷蔵はすでにわかっていたので、
三郎がかなりの腕を持っていてそれを認められたのだと思った。

それでも容赦なく生徒に当てていくので
それさえなければ完璧な先生だと皆思っていたに違いない。

雷蔵も最初感じたぞっとするような感覚もなくなり、
三郎をいい先生とそれだけで片付けていた。
しかし、それをあっという間に変えてしまう出来事が起る。




いつもの授業のはずだった。

「はい、久々知正解。んじゃ、次の問題は~・・・」

(あ、やだな、あれ特別難しいや、わかんない。)

雷蔵は眉間にシワを寄せた。
物質の性質と構造体を分かっていないと分からない
問題など、普通の生徒に分かるわけがない。
きっとこれは先生自身が解くのだろうと、油断していた。

「雷蔵、いってみようか。」

「え!」

指名されて思わず声が出る。
どう考えてもわからない。

「あの・・・わかりません。」

「え?嘘だろ?雷蔵が分からないって・・・
 あ、問題が悪かった?これならどう?」

そう言って三郎が黒板に書く問題の内容は
全然難易度が下がっていないものばかりで。
雷蔵はずっと首を横に振り続けるだけだった。

「・・・雷蔵、今日は残って私と補講ね。」

「は、はい・・・。」

シュンとうなだれて返事をする。
三郎からつかれたため息が少し痛かった。



放課後、雷蔵は言われたとおりに教室にポツンと残っていた。
一人の教室の広さに心細さが強くなる。
ガラ・・・と開けられたドアからは自分と同じ顔が現れる。

「偉いな、言いつけどおりに残ってたか。
 たいていの生徒は忘れたフリをして帰ってしまうんだがな。」

教科書でポンポンと肩を叩きながら、ニッと笑って
雷蔵の席の隣に座る。

「・・・どうしてもあの問題はわからなかったから・・・
 僕もまだまだだってことですよ。」

頭を掻きながら困ったように笑う雷蔵。

「あれはいいよ別に。
 大学の化学専門の問題だし。」

「え・・・?」

「雷蔵と二人きりになりたかっただけ。
 よかった、雷蔵が優等生で。残ってくれていた。」

「あの、何の・・・」

言葉の途中でぎゅっと抱きすくめられた。
いきなりのことに声が出なくなる。

「雷蔵・・・好きだよ・・・私だけのものにしたい・・・。」

「っ・・・っ・・・!」

掴まれた手首を振り払うこともできぬまま、
雷蔵は三郎から顔を背けるのだけで精一杯だった。

まさか教師にこんなことをされようとは
思ってもみなかった。
突然すぎるし、異常ささえ感じる。

「やめてください・・・!」

やっと絞り出した声は震えていた。
それに気づいた三郎は雷蔵の耳を食む。

「やっ・・・!」

「可愛い・・・、愛してるよ。」

耳元で囁かれる言葉が鼓膜を震わすたびに
身体も跳ねる、ピクリと小さく。
手際よくネクタイを緩めようとしてくる三郎に
雷蔵は必死で抵抗する。

「嫌ですってば、冗談が過ぎます・・・!」

「冗談じゃないよ、君の真面目に授業を受ける姿だとか
 時折見せる笑顔だとか、全部が私を捕らえて放さないんだ。
 ・・・他人と身体の関係を持ったことはないのかな?
 私が教えてあげよう、特別授業だ。」

「え・・・?!いゃ・・・」

その言葉の先は三郎に吸い取られる。
一瞬で奪われてしまった。
初めての唇。

「っ!」

挿し込まれた舌に噛み付く。
じわりと鉄の味が口内に広がった。

「バカッ!お前なんか最低だ!」

バッと自分のカバンを抱えて教室を出て行った。
雷蔵の走り行く後ろ姿をじっと三郎は眺めながら
ペッと血を吐き出した。
口元は弧を描いている。




それからというもの三郎は何かと雷蔵に補講を言い渡した。
雷蔵もそうならないように頑張って予習をしてくるものの、
相手は専門教師である。
その場で問題を作ることもたやすい。

呼び出されるたびに、先に進む三郎の行為に
雷蔵は仕方なく従うしかなかった。
逆らっては卒業さえ危うくされかねない。
それだけは避けたいと思った。

今日も三郎に呼び出されている。
授業中に竹谷とやり取りしていた手紙が三郎に見つかったのだ。

『優等生の雷蔵がこんなことを・・・。
 ダメだな、この手紙は預かる。放課後化学実験室に来なさい。』

わざわざ雷蔵の手に己の手を重ねるところらへんが
おかしいのだが、それを誰も口には出さなかった。

黒カーテンで包まれた教室は暗く、
蛍光灯は一つつけられただけで、
その下に顔にぼんやりと影を落とす
雷蔵を呼び出した張本人がいた。

「先生・・・。」

「いい子だ・・・よく来たな。今日は、全部、だな?」

「・・・・・・」

雷蔵は目を伏せ眉を寄せながらネクタイをはずした。
ワイシャツのボタンもプツ、プツとはずしていく。
その様子を三郎は嬉々とした表情で眺めている。

雷蔵がワイシャツの前を開け、足をさらしたところで
その場にしゃがみこんでしまう。

「・・・お願い、です、これ以上は・・・」

三郎を見上げながら雷蔵が懇願する。
三郎は優しく微笑みながら雷蔵に近づき、
手をとって立ち上がらせる。
自由な片手でしっかりと前を握って隠そうとする雷蔵を
それでも三郎は許していた。

「雷蔵は単位いらないんだぁ・・・」

「卑、怯者・・・っ!」

「雷蔵って本当に鈍感。」

本当はこの私との関係を楽しんでいるだろう?
本気で嫌なら私のことを学校なり親なりに言いつければいいのに。
何故君はいつもここに来る?
何故君はいつも嫌がりながらも言いなりになる?

「雷蔵も私が好きなんだよ。」

「そんなわけ、っ!」

「いいさ、全部私のせいにしてしまえばいい。
 教師という権力を振りかざして雷蔵に無理を強いる。
 君はそれに仕方なく従う、そうでなければ納得しないんだろう?」

「・・・・・・」

「それでも私が雷蔵を欲しているのは変わりないから、
 私はそれでも構わないよ。さぁ・・・足を開いてごらん。
 いつものように気持ちよくしてあげよう・・・。」

薄暗い静かな化学実験室の机の上。
黒い机と相反するように白い胸が寝そべっている。
足の付け根に顔を埋める男が愛しいなどと、
そんな気持ちは持ち合わせていない。

そう思っていた。

今響くのはただ、卑しい濡れ音のみ。


乱れた吐息まであとわずか。




clap-5nen.gif

*********************************************************************************

失敗したぁー。
やっぱり日頃からコツコツ書かないと
腕が鈍りますー・゚・(ノД`;)・゚・
意味プーな駄作になってしまった。
教師と生徒のけしからん関係を鉢雷でと思ったんですが・・・。
意味プーな(ry

アンケート宜しくお願いしますーv


拍手いつもありがとうございます!
更新しないままに週末!!なんてこった!!

G.Wも私には休みは一日しかありません。
最近バイトにでっぱなしです。(´ω`)
キツイ~・゚・(ノД`;)・゚・

ここで少しお願いがありますー。

もうすぐしたらアンケートを置こうかと思っています。
マシュマロを本にするかどうかに関するものです。
ご協力お願いしますvv

マシュマロのコピー本は無理だと思うのでやっぱり今回は
オフ本になると思うのですが、そうなると

表紙(できたら挿絵)が欲しい・・・!!

と思いまして・・・。(*´∀`)
描いてやンよ!!という素晴らしく優しい絵師様を捜してます!!
自分が描くのは無理です・・・画力がたりんたりん。orz

実は今度大きなイベントがあったら出来る限り直参したいと
思っているんです。
そのときマシュマロを持って行きたいな~と・・・。

残念ながら今度ある名古屋とヤドカリオンリーには
いけそうにないので、(かといって委託も・・・)
また福岡おんりーないかなー笑。
大阪でもいいんですがー笑。(姉が兵庫に一人暮らし

そんなこんなで、お願いでした!
(あれ?お知らせかな?)


返信ですvv

『ここで鉢雷を補給~』の方様vv

あぁぁぁありがとうございますぅ~!!
なのに、なのに、私ったら今週一週間完全に更新しないまま・・・!!
あうぅぅ、すみません~涙・゚・(ノД`;)・゚・

お受験ですか、大変ですねー・・・!!
思い出します、自分の受験時代を・・・。
受験はつらいですよね・・・。受験って言葉だけで鬱ですよね・・・。

何で受験なんかこの世にあるんだろう・・・
こんな紙切れで私の何が分かるんだろう・・・

そんなことを悶々と考えながら、自分の欲望を抑えていました笑。
私はフリーダムな人間なので受験に束縛されるのがとても嫌で、
その時期はストレスで荒れてました笑。

でも誰もが通る道で、その先に絶対何か価値があるもの
(というかどんな形にしろ自分のためになるもの)があると
思ったら少ぉぉぉ~し、マシになったんです笑。(単純
そして、受験に成功して好きなだけパソコンしてやると思いました笑。
ご褒美ですよ!大事ですよ、自分へのご褒美は!vv(*´∀`)

方様もきっともやもやイライラの気持ちの中で苦しんでおられるかと
思いますが、どうか頑張って下さいませ!!
私も方様のために、更新頑張ります!!
方様がこのサイトで少しでも息抜きができますように・・・vv

拍手ありがとうございました、これからも頑張りますので宜しくお願いしますvv

[38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] [45] [46] [47] [48]  

Category
New Artical
 
今年 (02/03)
New Comment
 
by  まめすき 08/11
by  ぷっちょ 06/30
by  ほゆ 06/04
by  Tizen009 05/05
by  りこ 03/30

[Login]  [Write]  [RSS]


カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
リンク 
最新CM
[08/11 まめすき]
[06/30 ぷっちょ]
[06/04 ほゆ]
[05/05 Tizen009]
[03/30 りこ]
最新TB
プロフィール
HN:
モユコ
性別:
女性
職業:
学生★☆
趣味:
妄想(´∀`)
自己紹介:
めんどくさがり、大雑把です・・・σ(´∀`)
でもできるだけ閲覧者の方々には敬意をはらいたいと
思ってます。よろしくお願いしますvv
バーコード
ブログ内検索
ウチのサイトのお値段は?!

忍者ブログ [PR]
 Designed   by chocolate巧
忍者ブログ [PR]
 picture   by モユコ