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部屋に戻ると雷蔵が畳の上に大の字に転がって寝ていた。
まだまだ熱いこの時期に、よくもまぁこんなに安らかに眠れるものだと三郎は感心した。
頭巾を取って上着を脱いで肌着になっている雷蔵の腹に手を置く。
するとくぅぅっと気の抜けた腹の音が手に伝わってきて、笑ってしまった。
もっとその音が聞きたいがゆえに、三郎は雷蔵の腹に頭を預けた。
それでも起きない雷蔵に平穏を感じて、三郎も目を閉じる。
「寂しくないの?一人でいて。」
大きな瞳をしてじっと一人でいる三郎を見てきた。
三郎は一年の時から才能はずば抜けていたし、素顔も見せず、冷たいオーラを出していて、友達なんてまわりにいやしなかった。
雷蔵はその反対で、少し抜けてても優しい人柄が人を呼び、いつも隣には誰かがいた。
三郎はそんな雷蔵がうっとうしく思えていた。
いつもニコニコ笑っていて、楽しそうにしている。
三郎は今まで人に執着したことなんてなかったが、そんな雷蔵の姿を見るだけで、何だか腹の奥からイライラした感情が湧き出ていた。
そんな雷蔵に話しかけられたのである。
はっきり言って不快だった。
「・・・私の近くに寄らないでくれるか?私は一人が好きだから。」
「あ・・・ゴメン。でも、一人より友達といたほうが楽しいよ?きっと。」
エヘへとまた笑った。
それが三郎の神経を逆撫でした。
「うるさいっ!私はお前みたいな軽そうなへらへらしたやつが一番嫌いだ!!あっちに行け!!」
いきなり大声を上げた三郎にポカンとした顔を雷蔵がする。
三郎もなんでたかがよってこられて、2.3言いわれただけで、ここまで怒ったのか自分でも分からなかった。
はっとして口元を押さえたが、ふと雷蔵のほうを見ると、さらにギョッとした。
大きな目からボタボタと大粒の涙を溢しているではないか。
「これぐらいでなんだっ泣くなッ!」
「うぅ~・・・ひっく・・・」
どんなに言っても泣き止まない雷蔵にほとほと困り果てた三郎は仕方なく、雷蔵の手をとって井戸の方に連れて行った。
三郎の懐から己の手ぬぐいを取り出し、水に浸して、絞る。
それを泣いている雷蔵の真っ赤な頬にこすり付けた。
「泣くなといっているだろうが。さっさと顔を拭け。」
三郎はそう吐き捨てたが、さっき怒鳴りつけた冷たさはなく、雷蔵は涙をとめた。
それに少しホッとして、三郎は丁寧に雷蔵の顔を拭いていく。
三郎は不思議だった、何故嫌いなはずのこの人間に自らの手ぬぐいを濡らして、こんなにも丁寧に顔を拭いてやっているのか。
もっと乱暴に拭いてやればいいじゃないか、いやそれどころか、あのままあの場所に置いてきてしまえばよかったのに。
そんな考え事をしながら顔を拭いていると、雷蔵がじっとこっちを見ていた。
「・・・何だ。」
「ありがとぉ、鉢屋君はもっと恐い人かと思ったけど・・・とっても優しい人なんだね!」
花の顔のようにふわりと笑った雷蔵。
一瞬その顔に見とれてしまった。
「鉢屋君?」
「うるさい。泣き止んだのなら何処ぞと行け。いつもまわりにいる人間が待っているだろう。」
「友達?友達ならもうここにいるもん。行かなくていいもん。」
微妙にかみ合っていない会話などお構い無しに、雷蔵は三郎の手をギュッと握った。
三郎はまた自分は怒るかと思ったが、雷蔵の掌の温かさをじんわりと感じて、腹は立たなかった。
雷蔵の瞳はキラキラしていて、優しい色をしていた。
それからというもの、雷蔵は他の友達より三郎の傍にいることのほうが多くなった。
故郷からの友達なのだと兵助のことも紹介された。
それでも三郎は雷蔵に冷たく接していた。
雷蔵のことが『嫌い』だと信じてやまなかったからだった。
そんなある日雷蔵がクラスメイトと話している会話を聞く。
「雷蔵、何で鉢屋なんかと一緒にいるんだよ。」
「そうだよ!アイツ変人じゃんか、しかもいつも気取ってるし。」
障子の外からその声を聞きながら、三郎はフンと鼻で笑った。
弱者の妬みはいつものこと、才能がないからこそ、それを持つ者に嫉妬する。
雷蔵も随分と私に冷たくされているのだから、そう思ってて当然だと。
そう思った。
「三郎は変人でも気取ってもないよ。とっても優しいんだから。」
聞こえてきた雷蔵の声はしっかり、はっきりしていた。
三郎は目を見開いた。
「雷蔵?マジでいってんの?」
「そうだよ。三郎のこと、悪く言う人となんか友達してられない。じゃぁね。」
「え?え?雷蔵?」
あぁ、雷蔵が席を立った。
こっちに向かってくるはずだ、どこかにいかなくては。
でも、あぁ、体が動かない。
ガラッと障子を開けた雷蔵はビックリ仰天だった。
「さささ三郎?!どうしたの?!あ、あれ、僕の顔・・・。」
今まで上級生の顔や先生達の顔を借りていた三郎が今は雷蔵の顔そのままになっている。
それが三郎が雷蔵の顔をした初めてであった。
胸の中が暖かいもので満たされている。
どうしようもなくなって、あわあわと慌てている雷蔵を抱きしめた。
「さ、三郎?」
「雷蔵、よく聞け。冷たくして悪かった・・・嫌いなんて」
嘘だ。
そっと耳元で囁いた言葉に、雷蔵は一瞬目を見開いて、そしてすぐにあのときのようにニッコリ微笑んだ。
雷蔵が嫌いだったんじゃない。
こんな素直じゃない自分が嫌いだった。
いつも笑って優しい雷蔵、ずっとじっと見つめていた。
そんな雷蔵が自分に笑いかけてくれない、気づいてくれない寂しさと悔しさにイライラしていたのだ。
だから話しかけられた時、すぐにそのイラつきをぶつけてしまった。
兵助なんかをニコニコの笑顔で紹介してきて、すごく嫌な気持ちになったのもそのせいだ。
心のどこかで、
『私は雷蔵だけでいいのに。』
そう思う気持ちがあったのだと思う。
全部雷蔵にイラついた気持ちを向けることでいつもの自分を保とうとした。
でも今考えるとなんて馬鹿げていたのだろう、こんな自分を保っても何もなかったというのに。
「雷蔵、私、雷蔵が好きだ。好きで好きでどうしようもないぐらい、好きだ。」
「うん、僕も三郎のこと、ダーイスキだよ!!」
そういって雷蔵から背中にまわされた腕のぬくもりが伝わってきた。
嬉しくて、一層強く雷蔵を抱きしめたのを覚えている。
「三郎~あついよぅ~重いよぅ~どいてよぅ~。」
雷蔵のじっとりとした声で目を覚まし、頭をあげ、周りをキョロキョロと見まわす。
雷蔵もやっとどいたかと体を起こす。
「いてて・・・畳で寝たから首がいたーい・・・。」
顔をしかめる雷蔵を見て、三郎は雷蔵の両頬の端を掴んでキュッと吊り上げた。
「いひゃひゃっなにふんのっさふろぅ!!」
「雷蔵、お前はいつも笑っていろ。」
「ふぇ?」
「それが雷蔵なんだ。」
パッと手を離して、頬を撫でる雷蔵に笑いかけた。
頭にはてなを飛ばしながら首を傾げる雷蔵が可愛くて、幼い頃の自分を思う。
「可愛い子ほど、冷たくしちゃうもんだよな。」
その言葉にさらに雷蔵が首をかしげたのは言うまでもない。
*終わり*
キーを叩くスピードも遅くなってしまいました・・・ノー!!
この文は皆さんの感じ方に任せます。
それから拍手変えました。
またバカな文を書いています・・・しかも○雷あり・・・。
○のなかには鉢は入りませんので笑
それではココまで読んでくださってありがとうございました!!!
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でもできるだけ閲覧者の方々には敬意をはらいたいと
思ってます。よろしくお願いしますvv